-Gibson-

 

5月の初めころ、新美術新聞という情報紙に
「わたしの宝物」と言うタイトルで文を書いた。

宝物!?バイクかブーツか、帽子とかリングシューズも・・・なかなか悩ましい。
友人たちや絵の道具はもちろん、一番好きな絵描きは、と考えればすぐに出てくる。
生活の中で8割くらいは絵に関わることをしたり考えたりしている様な気がするけれど、
それ以外できっと一番多いのがギターを弾いている時間かもしれない。
何せ18歳の夏まではロックギタリストになるのが夢だったのだから。

14歳で初めて手にしてから幾本もの安ギターを弾き繋ぎ、受験生だった19歳の頃、数か月分のアルバイト代をつぎ込み、憧れていたギタリストと同じモデルを買った時から20年弾いているGibson -Les Paul- standard。
ピックアップはアルニコⅡを搭載。
構える高さからピッキングスタイル、ヴィブラートのタイミングなどなど、研究しては練習する日々。
高校生の頃は1日8時間弾いている日もあった。

基本を元にしながらもなるべくシンプルに、格好良く弾きたい。
大音量で弾いたときの身体の中がすべて音になってしまうような感覚はなんとも言えず高揚する。
しかし今思えば、Gibson-Les Paul-を手にした時に憧れは憧れのまま満たされた様に思う。
大声で叫ばなければ生きて行けないほど世の中に不満があったわけでもなく、黙って俺のプレイを聴け!と言えるほど弾けるわけでもなく、自己満足で楽しいのだからまぁ才能はない。

音楽でも美術でも、下手くそじゃいけないけれど、行きつく所、余分なテクニックよりも余計な飾りよりも最後に欲しいのはオリジナル。
憧れのギタリストモデルを弾いたところで真似以下にしかならないけれど、近づこうと必死になって追いかけ、その先にオリジナルを手に入れられるかどうかはどの世界でも同じく、また悩ましいところで。

そういう様々な事が巡り巡って「絵を描くこと」へと繋がって行く。
時々、「あなたの絵からはクラシックが聞こえてくる」と言われるけれど、実はロックが流れているんだ。

今日もロックをかけて、描きすすめたぜ。



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