無心

 

昨年と今年は
よく描いた

どこかで手を抜いた覚えはないけれど
でも
まだ限界ではないはず

昨日
あと2カ月の間に30点近く描き上げなければいけないペースが決定
2つの個展に向けてとか雑誌の取材とか・・・

その事態を予見していたかのようにキャンバスの準備は整っている

粉雪が舞う寒空の下
取材をしながらどうやり切るかを考え
そこに全てを傾ける決意をした

頭で考えることなんて知れている
全身で向かう準備をする

paesaggio

 

パエサッジォ= 風景 または 風景画

アートコレクタ-(生活の友社)という美術雑誌に
風景画の特集があり
最近描いた30号の絵をインタビューと共に載せていただいた

別のページには友人と一緒の対談も
その写真を見た別の友人曰く「よそいきの顔ですねぇ 見たことないです」(笑)

自分の姿がどう見えているかなんてわからないけれど
振り返って出来た道が
若い絵描きや学生や受験生たちにとって目印くらいになればいい
おれもそうやって雑誌や画集や展覧会を観ていたから

来年に向けて
先日貼ったキャンバス50枚の内
半分に和紙を貼り込んだ
ツナギ姿に刷毛を持つ手はどう見ても建具師(笑)

そしてまた1枚小さな絵を仕上げた
目の前の景色が変わっても
それだけは変わらない

luna

 

冬至を迎え
これからまた陽の光が長く射すようになるのが嬉しい
メンテナンスに出していたGibsonが戻ってきて快調

先週自分のメンテナンスも終えて一安心し
今週は来年用の木枠を組み立てた
とりあえず50本くらい

束になって送られてきた木枠を組んだ後
スペシャルシェイプを施すために延々とカンナかけ
いつものツナギをきてロックをかけているけれど
おがくずまみれの姿は大工にしかみえない・・・

来年のハードな予定を全開で走り抜けるように
少しずつイメージを集中し始めている

どうなっていくのか
どうにもならないこともあるけれど
どうしたいのか
は捨てずにいたい

そんなことを考えながら夕方ロードワークにでたら
大きな月が水面に揺れて綺麗だった

Lead to me

 

やってられないぜ・・・とか色々なことがある中
今日も2点の絵を仕上げ
今年の制作はもう80点を超えた

何のために絵を描いているのか
ずっと考えている
言葉にすると全てが違っている気がしていた

今は
自分にとって 大切なもの を知るために
確認しながら描いているのかもしれない

大きく踏み出したり
大きく踏み外したり

前を見たって何もないけれど
振り返れば来た道が残っている

unico

 

今 描いている絵の中は
全てが彩られ 輝いている

もしも ほんの少しだけ そこに哀愁が見えるなら
それは 全てが色褪せて見える世界を含んでいるから かもしれない

ほとんどの色彩が失われてしまっても
そこに 一点の光を見つけて生きて行ける

そんな絵が描けるようになりたい

幻想!?

 

好きな絵描きはだれか と聞かれたら
すぐに答えられる

アンドリュー・ワイエスの展覧会を観てきた

いつものように 心静かに絵の前に立ち
筆跡をたどるようにその世界を感じてきた

人によっては緻密な筆跡のテンペラ画のイメージが強いかもしれないけれど
彼の水彩画は深い・・・

筆運びだとか紙の種類だとか
そういうのも興味深いけれど
鉛筆や筆の毛先が紙に 触れるか触れないか くらいのタッチの隣に
なぜ?と思えるほどの強い筆圧が見えたりする
微細な描写と同時に伸びやかな線があって
そんな風に言葉を聞いているような気持ちになる絵を描く人はそう多くはない

今回の展覧会はオルソン家にまつわる構成になっていて
ワイエス自身の想い入れはずいぶんと強かったのだろうと想像できるけれど
あまりにも多感な心の動きの痕跡が見えて
表現することの強さと難しさを抱えて帰ってきた

絵に限った事ではないけれど
例えば穏やかで静かな印象の絵を描いていても
想い が余ってしまうこともある
良い方にも
悪い方にも・・・

感情的に絵具を置くことはほとんどなくても
そういう想い入れが 前面にではなく 内側に滲んでいるような
自分の描く絵がそんな風にみえるといい

夢中

 

今日も
12月とは思えないくらいの陽気で
寒さを身構えていた身体が戸惑う

絵を描くということを考えれば 師走が区切りではないのだけれど
なんとなく1年を振り返ったりしそうになる

2、3カ月先からほぼ1年先まで
決まっている展示の準備をしているけれど
本当に描き切れるのか!?とか
何を描くのだろう?とか・・・

考えてもいっこうに実感がわいてこない
一心不乱に というのではなく 五里霧中といった感じかな

そんな時期があってもいいのかもしれないけれど
目に見えない感情や感性にもまれているのかもしれない

瞬き

 

福岡でのグループ展が終わり
九州ではことし最後の展示だったので挨拶の電話をし

東京でことし最後になるミニヨン展が今日から始まり
先日は画廊で雑誌のインタビューを受けて話をしたり
来年大阪で予定している個展の絵を仕上げて送ったり
これから描く絵の向かう先とそのイメージを作ったり

時が経つのが
とても速く思えるような
とてもゆっくりなような

絵に向かう時にはいつも
うまく言葉にすることができない感情を幾つも重ねて織るように描いている

自分の目の中にだけ瞬いている
キラキラとしたもの は
ほんとうは手の届かないくらい
遠くにあるものなのかもしれない

大切なものは
どこにあっても温かく
その輝きは失われないでいてほしい

そんなものとは無縁に見える街の光に照らし出される
灰色の雲の遥か向こうに浮かぶオリオン座みたいだな
とかって思う



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