5月の末日にちょっと手前味噌な話を。
おれの父親は栃木県の益子町という田舎で
約50年を陶芸作家として過ごしてきた。
もちろんおれが生まれたときはすでにセトモノヤだった。
絵がべらぼうに巧い父親を真似て幼少からお絵かきをし、
野球やらギターやらをやった挙句に美術の道へ進むというのは
まあ自然な成り行きだったんじゃないかと思っている。
絵の修業をした浪人時代、大学時代、卒業後と描いた絵を見せるごとに
〝指導″を受けてきた。
絵描き(当時は絵描きを目指す人)と陶芸作家というジャンルの差はあれど
モノ作り としての何たるかは散々仕込まれた。
その父親が最近になっておれの絵を手放しで褒めるようになったのは
嬉しいよりも、なんだか寂しいな・・・という気持ちのほうが多いような気がする。
そんな父親も70歳を数年過ぎ、おれとしてはもう一花咲かせてくれるんじゃないかな・・・
とどこかで思っていたんだけれど、訳あって最後の個展(たぶん)を地元の近く
のギャラリーで開催する運びとなったわけで、
2時間程電車に揺られて(途中で迷ったりして)観に行ってきた。
これまでの作品を一堂に介して展示された会場は、
おれにとっては子供のころから見慣れた作品の、しかし充実した内容だった。
これも手前味噌ではあるけれど、良い桜の小物入れを購入した。
ジャンルに限らず、作家の生涯をかけた1連の作品というのはやっぱり印象深く、
これはおれも持っておかないと と思った訳で、
父親は なんだ、いいのか?なんて言っていたけれど、
絵を描いて、欲しいと思ったものが買える様になったんだ。
これまでおれに幾らつぎ込んだかは知らないけどさ(笑)
更に手前味噌ではあるけれど、会場で父親と話をし、
お互いの作品を褒めあったりなんかしちゃって、
雲の上だと思っていたのがなんだか近くにいる様で、やっぱり嬉しいんだか寂しいんだか(笑)
おれがこれまで見せてもらった分、これからおれの作る世界を見てもらおうじゃないか。