継ぐもの

夏の終わりはまだまだだ。

今年は1月からグループ展がいくつもあったけれど、

今、2013年初の個展が広島は福山の天満屋美術画廊で開かれている。

目下この後に控えるアート台北と銀座日動画廊での個展に向けた絵、

2m✕3mを筆頭に50点近くの制作に集中しているけど、明日は福山の

会場へむかいます。

会場でお客さんに配るカタログがもうなくなった、と担当の方から連絡があり、

あと数か月後には2013年最新カタログができる予定だけれど、仕方ないから

2011年の個展のカタログにサインを入れて持参するよ。

新たな制作の中で、日本における現在の絵の動向や若い人へ向けて言いたいこと、

なんかを整理しているんだけれど、

おれが思うに 表現方法はなんでも良くて、でも古臭くないこと。

そして表現することに 意味を見いだせるかどうか、そしてその意味を伝えられるかどうか。

やってるつもり でも外から見れば一人よがり なんて山ほどあるし、

絵を見て、一瞬ですべてが入ってくるのがいいと思っている。

考えなきゃ解らない、とかオーディエンスが手を加えないと完成しないとか、

流行りとか目だけで見える絵とか、そういうのはおれには響かない。

ただ前に立って、心を絵に向ければすべてが入ってくる、説明のつかない感情も

その人が持っている記憶とか生き方とかも、絵の中の空気と瞬時につながって見える。

そんな感覚を信じている。

これまでずっと目の前のそんな感覚とやり取りしてきたけど、

なんかいつの間にか 若手 じゃないみたいな扱いになってきて(笑)

あーおれも下から見上げてた 生き残り組 に入ってきたんだなぁなんて思う。

目指して、生き残って、継いだものを伝えていく。

言葉で書くと簡単だけど、その全部に 命を懸けて がつくとそれが歴史になるんだろうね。

明日はちょっと休んで自分の絵を観に行くよ。

 

LAST SUMMER

時々海へ魚を釣りに逃亡しながら、時々アトリエでお勤めもしながら、

雷が鳴り響ても雨がアスファルトを打つ音が響いても

結局今日は一歩も外へは出ずに制作してすごした。

朝、画廊の担当者さんへ アート台北 への出品作品のうち出来ている絵の画像を送り、

11月までにあと40点程の制作を段取りしたり、数点の描きかけの絵を描いたり次の下地を

作ったり。

HARD ROCK や METALをかけながら描いていても、頭の中が静かになるときがある。

 

そういえば昨年の今頃は、シンガポールから帰ってきていて、

そしてその帰路の途中の空港で 同い年の友人の訃報をきいたんだ。

彼女は何年もおれに絵を習っていて、最後の1年は闘病の為に授業には来られず、

それでも絵を描くための写真を撮りためたり、大好きだったアニメの話やオリジナルの人物像を

描く準備をしていたらしい。

本当の命日は1か月前くらいになっちゃったし、お寺に挨拶にも行けていないけど、

真剣にやってきたことを振り返ると必ず思い出すんだよね。

 

そんなことを思いながら、おれが描く絵には何ができるんだろう・・・

 

最近いろんなことを整理する機会があって、毎日のように考えるんだけど、

表現の方法とか向かう先とか、そういうのは後回しで、

ホンモノであること。

それまでに積んできたことや、それに費やした時間と情熱

伝えたいことに奥行きがあるかどうか。

それがホンモノかどうかは その深さと時が証明することだろうけど。

 

発信する以上は受信(着信でもいいや)する側に届けること。

その意識が無ければそれは単に発散しているだけで、

おれが目指しているコミュニケーションは成り立たない。

 

ある絵描きがこんなことを言っていたらしい。

 

平凡なことがいい。

だがそれを見つけるのは容易ではない。

平凡なものに信頼をおき、それを愛したら、

その平凡なものが普遍性をもってくる。

 

響くねぇ。

来年の夏も、きっとそんなことを思い出しながら

絵を描いているんだろうな。

 

 

 

Speaking to the world

8月も半ばを過ぎ(!)

相変わらずのペースで制作進行中!

これまでのモチーフに加え、新たなイメージをキャンバス上に浮き上がらせ、

主観と客観を行ったり来たりしている。

 

これまでの制作キャリアを振り返る機会があり、

そこで初めて具体的に見えたことがあった。

ここ数年(10年くらいか?)描いている絵について、

それまでは 自分の内面を表そう としていたものが

内面に自然と入ってくる 空気や景色を描いている、ということに気付いた。

 

なんとなくは解っていて、でもそれをいざ言葉にしてみると

そういうことだったのか・・・と思うこともあるんだな。

その流れでいろいろと新たなトライを重ねているわけだけど、

そこでもう一つ。

これからの野望。

ん~なんだろう?

絵が描き続けられるように とか 美術館で自分の作った世界を表現したい とか

なんかいろいろ思っていることはあったけど、最後に残ったのは

世界中に行きたい。

感覚が合うところも 合わないところも、意味が解るところも 解らないところも

そんな世界中のセンスにふれてみたい。

そしてその空気に触れ、自分の感覚で表現したものを通して世界中の人達と

信じているものの話をしたい。

そこにはきっと、色んなものが残ってきた理由があるから。

 

世界中に行ける気もする。けれど、行けない気も、同じくらいする。

大人になればなるほど、出来る理由よりも出来ない理由のほうが多くなる。

そんな大人にはなりたくない。

だから絵を描いているんだけどね!

 

 



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