絵描きの行方

好きな絵描きと言えば、

アメリカ、ペンシルヴァニア州チャッズフォードの

画家Andrew Wyeth(アンドリュー ワイエス)がNo.1だ。

AndrewWyeth img_0

もちろん絵も好きだが、向かう姿勢が良い。

時々近付こうとして真似てみる、だが捉えようとしている事が違うので

必然的に絵は近付かない。

 

では日本の絵描きはどうか。

世話になっている画廊で時々目にする絵描きの中で群を抜いて良いのが

香月泰男と熊谷守一だ。

これも姿勢が良い。

3者とも、描かれた絵の筆跡をじーっと目で追うと、無限に続く絵描きの息づかいが見えてくる。

ワイエスの絵には近付きたい、が、「もし会っても話は通じなそうだ」

彼が2009年に亡くなったニュースを聞いた時にもそう思った。

そして、熊谷守一には到底近付けない。絶対無理。

yjimage 05

「画壇の仙人」などと呼ばれ(そんなのは沢山いるが)

もちろん人付き合いもあっただろうし、奥方もお子様も居られたが、

その奥方に何度頼まれても絵が描けずあまりの貧困に子供が亡くなっていく様を

絵に描いて、 我ながら鬼だ と愕然とするというエピソードが残るほどの壮絶さ。

周囲の人たちがこれではあんまりだと助けてくれた等良い話もあるにはある、が、

最晩年の文化勲章の内示も「これ以上人が来る様になっては困る」と辞退。

勲等叙勲の内示の時も「お国のためには何もしていないから」と

これまた辞退する程の筋の通りようはもはや遥か彼方の人間性に感じる。

50年程も連れ添った奥方の

「主人にとって何が価値があるのか美しいのか、ついぞ私にも分かりませんでした。」

と言うのを読んでひっくり返りそうになった。

 

香月泰男はシベリア抑留の体験から生まれたシベリアシリーズが有名であるが

香月 yasuo_kazuki001

 

別の絵が好きなのでここは割愛。

ともかくこの三者に共通点があるとすれば、

長生き(香月は63歳だが熊谷は97歳、ワイエスは91歳まで生きた)

晩年にかけて生まれ故郷またはゆかりのある場所に何十年も住み続け

そこで見たものに全霊で立ち向かうという姿勢。

 

おれにも故郷はあるが、もはや出てからの方がずいぶんと長くなってしまい、

いつか帰って骨を埋めようなどと考えているわけではないのだが、

そんな生き方に、そしてそこで見たものを生涯描き続けることに

どこか憧れるといった血が幾らかは流れている。

そう思うと無意識の内に父親の影を追っている様にも思え、これもまた「あぁ、血か…」

と愕然としたりするのである。

 

遠い遠い血筋にパリで行方知れずになった絵描きがいると子供の時分に聞いたことがある。

危ない血も幾らか流れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

影の中を行く

20170118_105835

 

36x46cmくらいの水彩画を描き始めた。

場所は一昨年も友人のアテンドで訪れたパリのサン・マルタン運河の辺り。

20170118_112145-1

 

水彩画の良いところは水と絵の具の使い方で

空気や光の感じを自由に動かせるところだ。

いろいろ思うところあって、あまり色数を使わずに進める。

20170118_143533

 

なんとなく全体が見え、

画面右手の建物の感じがパリっぽさを見せてきた。

20170119_104736

 

描き始めに思い描いた空気感を損なわない様に注意しながら

広がりを増していく。

運河を行く黄色の観光船が「どのガイドブックにも載ってる」

ってミーハー感を醸している。

画家の見ている事とは違うけれど、それも事実の一端なので

受け入れる様に描いてみる。

20170120_100334

 

 

画家の見た、そこに吹いている風を思い起こし、

光の温度を少しだけあげるように色を施し、

絵が止まったのでここまでにしてサインを書き入れる。

こうして見ると、描き始めの空気感は捨てがたい。

何を見ているのか、何を描く為に筆を取ったのか。

自問自答を繰り返しながら、その答えの積み重ねが

今日も続くのである。

 

 

 

 

 

カレンダー展

img_0410

 

ゲートシティ大崎にて、第68回全国カレンダー展が開催され

私の絵を採用して下さった宇部興産カレンダーも展示されます。

1月14日〜18日 10:00〜18:00(18日は17:00まで)

詳しくはこちらをご覧下さい→ http://www.gatecity.jp/plaza/event/2017_02/event_1702_2.pdf

 

1月2月のこの絵は After glow というタイトルで2007年制作、

大きさはF30(73×91cm)で、2008年の個展に出品した絵だ。

本当に何気ない、それでもそこに住む人たち、訪れる人たちの

生活や息づかいが感じられる場所を、その時のおれの心情を重ねて

捉えたいと思って描いた絵で、色々な試みを繰り返しながら出来た1枚なのだ。

季節ごとの絵を選んでくれたのはエージェントとクライアントの方々で、

この絵が年明けにくるのはある意味感慨深い。

 

 

 

 

2017

Exif_JPEG_PICTURE

皆様には旧年中は大変お世話になりました。

2017年も全力で制作活動に臨みますのでよろしくお願い致します。

 

また新しい自身への挑戦と勝負の1年が始まりました。

いろいろな目標を具体的にたてましたが、

制作については、

なにを 描くべき か。

これを追究し、独自の世界を深く確かな物にするべく

筆を取りキャンバスに向かおうと思います。

 

国内外グループ展参加を含め、

6月には3年振りの福岡博多で個展、

11月には地元栃木の宇都宮で個展

を予定しています。

 

 



archives