やっぱりね

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つい先日まで、うっかり45年前だと思いこんでいたんだけれど、

44年前だった。

ロックギタリストにでも野球選手にでもバイクレーサーにでもなれる

可能性がまだ100%だった頃。

この世に生を受けたその日を堺に1年毎に少しずつその可能性は数を減らし、

44年目の今日、Parisで絵を描いたりしている。

外国で誕生日を迎えるのは4回目か?先日は中華店でパーティをしてもらい、

友人知人より沢山の祝いのメッセージをもらい、みなさんありがとう!

今日は嫁さんと、近くのパン屋でケーキを、肉屋で鶏の丸焼きを買いこんで

ワインで乾杯するのだ。

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今も絵の具だらけの手でこれを書いている。

個展まであと1週間ちょっと、いつものことながらギリギリまで制作を続けている。

景色で言えば2000年も前から変わらない空と、

その下に広がる、人が築いてきた自由や誇り、信念の蓄積、そこへ射す光は

明日への希望であるはずだと信じて生きてきた今日までの時間。

変わるものと変わらないもの、絵空事のようにもすぐ隣にあるようにも思える事を

絵の中に描き表せるといいと思う。

 

そういえば、2年前の今日、

当時の彼女と市役所に婚姻届を出しにいき、

めでたく夫婦となったんだけれど、ながいこと親しくさせてもらっているお姉様に

2人揃って報告に行き、「時期もちょうどいいので自分の誕生日を結婚記念日に

することにしようかと・・・」

そうしたらそのお姉様 「あなた、なんて自分勝手な男なの!?(笑)」

 

あ、やっぱりね。

 

 

 

 

そういうことなんだってさ

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前回の続き

 

そういうことなんだよ を現実のものにするというのは

それもまた大変で、大変なのは自分がかというとそうでなく

周りに支えてくれる人たちがいてくれてこそ、という事なんだ。

 

学生の頃期間限定でバイトしたコンテナ倉庫の会社の主任。

「オメーが1番にバックれると思ってたけどよ、

こんなに働くと思わなかったよ、絵で食えなかったらいつでも雇ってやるぞ」

と言ってくれた。

 

卒業後生活に困窮した時に世話になった補修屋の女社長。

朝6時に起きて現場へ向かい11時過ぎに帰宅すると次の日の現場の

FAXが届いているという日々で、

半年もしないうちにアルバイトを辞めたい旨申し出ると

「おい!ただで求人出してるんじゃないぞ!何のためにお前を雇った

と思ってるんだ!」とどやされ、

「3ヶ月後に個展が決まったんですが、今の生活だと描けないんで

申し訳ありませんが・・・」と言った途端に

「おい!お前っ!良かったな!ガンバレ」といって1週間後にその月の

給料とともに送り出してくれ、個展にも来てくれた。

会社も辛い時期だったが元気をもらったとさえ言ってくれた。

 

その後から今まで、20年近く世話になっているアトリエのボスは

これまでの間、留学やら海外での制作やら個展やら、数週間~1年の

休みを容認してくれるという懐の深さ、その間授業を代わってくれる

先輩方、同僚達。

 

その都度、必ず帰ってこいといって送り出し、待っていてくれる生徒さん達。

 

のちに大きな転機を迎えることになる個展の準備中、カタログを作る金がなく、

アトリエに1ヶ月分の給料の前借りをお願いしたところ、

「それ私が貸してあげるよ」と即答してくれた先輩。

 

ここには書ききれない程の人たちの支えがあって描けている。

 

生涯をかけての恩返しは、本物の絵描き でいること。

そういつも心に思っているのだが、

先のボス曰く 「あー、彼は自分勝手な男ですからねぇー(笑)」

 

そういうことなんだってさ。

 

 

 

そういうことなんだ

例えば、

台風の夜、船が心配だと港へ出かけ、飛ばされてきた

看板かなんかに当たって大怪我、または死す。

猛吹雪の中、牛小屋を見に出てホワイトアウト、以下同意。

 

こんなニュースをソファだかコタツだかで見て、

「そんな時に出るヤツがバカなんだ」

そう言うヤツは、絵描きにはなれない。

仕事にするってのはそういうことなんだ。

 

絵で食っていける様になりたい!

と思ってバイトしながら絵を描いているおれよりも若い諸君。

雨風が凌げる以上のサラリーを羨ましいと思ったことはないか?

毎日残業、働いたのに給料なし。

当然ヤツらも楽じゃないが、絵描きなら当たり前。

君3ヶ月後から海外勤務決定。

断れないでしょう。

 

もし、3ヶ月~半年後に、

個展やるぞ、30点用意しろ!とか

しばらく外国で暮らしてこい!とか

そんな話になったとして、

やります!

行きます!

と即答する、そんな生活をしているか?

金が・・・家族が・・・休みが・・・できない理由が先に来るなら

君もう無理。

結果としてできるできないは別の話で、先ずは構えから。

仕事にするってのはそういうことなんだよ。

 

 

 

まさかの

この1週間は、

春の日差しと上がり始めた気温で若葉が一斉に開きだした

それまでを一気に冬に引き戻すような寒さと雨が続いた。

 

制作の傍ら街へ繰り出し、いろいろなところへ行っては

刺激を受ける。

普段あまり美術館へは行かず、なぜかというと絵描き目線

つまりは描いている側の目線で見えてしまうので、いわゆる

名画については時代を問わず技法から材料、どこから描き出し

どこで終わったかまでが見えてしまい、更にはその時代背景

や絵描きの特徴などは美術文献や実践(模写など)で散々見た

ので、正直あまり驚かない。

勿論、その絵や作家にまつわるエトセトラの知らないこと

は沢山あって、逸話や研究秘話みたいなのは聞くと面白い

し、高画質の画集であっても、流石にここにこんなことが

描かれていたのは知らなかった・・・というような発見は

あるけれど。

なんていうか、タネを知っている手品を見てる感じか?

 

とはいえ1回は行っとかないと!ということで(たぶん)初

となるルーブル美術館へ。

まさか!!!という声が聞こえそうだけれど、まぁまぁ。

で、案の定モナリザは人だかりで遠すぎてよく見えず、その他

ジォット、アングル、ドラクロア、ルーベンス、フェルメール

レンブラント、コロー、ミレー、などなどなどなどを至近距離

で見るも、あぁやっぱりね、みたいな感じ。流石にアングルは

うめーなと思ったりしたが。

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その点、手法や細かい技術をしらない彫刻はとても興味深い!

単純に大理石の大きさや、木をノミで彫るのだって大変なのに

どーやってこんな質感と造形を!?とひたすら関心してしまう。

 

きっと絵も何も知らない方が感動はひとしおだろう。

そして敬虔なクリスチャンではないけれど、教会の雰囲気には

圧倒され、心が静かになる。

そんな日々でした。

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