このところ制作もほぼ完成し、そろそろ街へ出ようかという雰囲気になってきて、
そうするとロンドンから友人が遊びに来てくれて(テニスのフレンチオープンを観に来たんだけれど)懐かしい人に会えたりして楽しい数日を過ごしていた。
パリの生活にもだいぶ慣れてきて、なにしろ絵が仕上がってきたので気持ちも落ち着いて、
トラブルもハプニングも一通り過ぎ・・・と思っていたら
ある朝、ガンガンとドアをノックされ、屈強な男どもがドカドカト入ってくるや、キッチンをぶっ壊し始め・・・
そういや先週、上の階に住む若者夫婦がやってきて、バスルームを新しく取り付ける工事をするから月曜日は終日水が使えない云々というような事を言いに来たけれど、
ここを工事するなんて言っていなかったジャン!
実際は屈強じゃぁないヒョロっとしたおじさんと、筋肉質というよりはデンプン質の若者が水道管の埋まっている壁を壊す工事をし始め・・・
画廊の方に電話を取り次ぎ事の成り行きを理解したものの、キッチン中が石の粉塵まみれでドアを閉めていたけれど他の部屋も何となく霞んでいて、
絵は大丈夫だったけれどまぁいろいろなことが起こるもんだ。
そんな中、アトリエのあるPorte d’Orleans(ポルト ドルレアン)というメトロ4番の南の端っこの、ちょうど反対側の終着駅にあるPorte de Clignancourt(ポルト ド クリニャンクール)
という所へ行ってきた。
駅から歩くことしばらく、大規模な蚤の市がある街で、前回見ていないエリアもあり、途中ランチをしながら(サーモンのタルタル&サラダはソースが絶品!)アンティーク三昧。
一日じゃ回りきれないけれど、ここへくると困るのは椅子とかテーブルとか家具が欲しくなるんだ・・・。
今度はマレ地区のアンティークショップエリアへ行ってみよう
5月26日 曇りのち晴れ
珍しく朝は曇りで風も涼しい。
朝から制作。
キャンバスを張るところからシルエットを浮かび上がらせる光描写までは、大きなイメージと遠くから見たときの画面構成を、
ここから先は細かい表情や雰囲気を仕上げていくので実はこの段階からが一番楽しい。
6月8日からの個展前日に業者に取りに来てもらう予定なのでそれまでゆっくり時間をかけられる。
タイトルやコンセプトを画廊へ送り、ニュアンスを伝えて仏訳をしてもらったり・・・準備は着々とすすんでいる。
イタリアや日本の友人からは、セーヌ川やモンマルトル、凱旋門をスケッチして来い とリクエストメールが来るけれど(笑)
もう少し待ってくれ、来週から描きに行くよ。
実は温めている行ってみたいところがたくさんあるんだ。
今頃のパリは夜10時になる頃にやっと日が暮れてきたというくらいの明るさ。
昨年9月に来た時とは違った角度から
モンルージュのアトリエの窓から見える景色。
毎日眺めながら描いているんだ。
シュミンケの水彩絵の具 紙はファブリアーノのサムホール 筆はTSUBOKAWA8号
5月25日 晴れ
昨日は、近所の森に住む小鳥や動物たちとパンとクラッカーでお祝いかと思っていたら
シャンゼリゼの近くに住むご家族やそのご友人方とシャンパンと料理でお祝いしてもらった。
いろいろな所でいろいろな日々を過ごしている人たちがいて、
出会いがあることに感謝する。
そんな人たちにおれの 綺麗事 が少しでも通じるといい。
本日朝から制作、青い絵の〝お子様ランチ〝 に銀の光描写。
これで全部の光描写が終わり、少しずつ仕上げの段階へ移っていく。
あとちょうど2週間、段々と緊張感が出てくるな。
5月24日 晴れ
ふと通り過ぎてしまうような何気ない景色の中に、特別なものが見えるといいと思う。
逆光のこの絵を見ている人は、必然的に光のある方を向いていることになる。
実在するもののシルエットは、光を捉えるきっかけになり、そうして影が浮かび上がる。
影の部分に施した色彩やマティエールによって風の温度や匂い、時の流れを見せ、それが人の生きる過程と重なって見えた時に、
その絵から受ける印象が深く心の中に入り込むことを願っている。
大切にしていること、美しいと思うもの、つかみどころのないそれらを手探りで確かめながら、
現実的な空間と重ね合わせていくことで普遍的な心の居場所を作りたい。
例えば植物が光を、動物が水を求めるように。
郷里を後にして、本格的に絵の勉強を始めたのが今から20年ちょっと前。
人生のちょうど半分を絵の世界で生きてきた。
おれにとって絵を描くことは居場所を作ること。
美しくないものの中にも美しさを、灰色の世界でも心豊かに、信念を持って我が道を行き、人の幸せを願う。
絵描きとしてこれからずっと、こういう綺麗事を作って行くんだと思う。
世の中綺麗事に溢れているゼ・・・ってヤツがいたらおれの絵を見に来てくれよ。
本当の綺麗事を魅せてやろう。
5月23日 晴れ
朝の散歩でいい写真がたくさん撮れて満足して帰ってくる。
午前中から制作、緑色の絵の光描写第2段と赤紫の絵の光描写の入る。
制作が多いと日常的な面白いハプニングも少ないけれど、後でパリ散策を楽しもうと思っているので、
今は集中して仕事をする。
夕方再びロードワーク。
明日も引きこもって制作だな。
5月22日 晴れ
フランス人て、本当に毎朝バゲットを抱えて歩いている。
気に入りのパン屋で細長い袋に入ったパンを持ってでてきたとたんに先っちょをちょっとちぎって
かじりながら家に帰る。
(おれがやるときっと売れない貧乏絵描きみたいなんじゃねーかな)
早朝から建築とかの現場に出て働いていたオジサン達は朝9時にはBARのカウンターでビールを飲んでいるし、
(おれがやると・・・)
それぞれの国の生活習慣を見るのは面白い。
本日は朝からみっちり制作。
ついにい一番大きい絵にとりかかり、銀で光描写。
ランチを挟んで夕方まで描き続け70%出来た。ちょっと調整が必要だけれど、だいたいイメージ通りにすすんでいる。
あと2週間ちょっとで個展だからきっちり仕上げないと。
フランスのワインも果物も本当に安くても美味しいけれど、ミルクはなんだか不思議な味がする。
5月21日 晴れ
本日午前中にシャンゼリゼ・クレモンソにある画廊へ出かける。
画廊で打ち合わせをしたのち、展示を見てから散歩がてらセーヌ川沿いをサン・ミッシェルまで歩く。
どこをとっても絵になるし、どこをとっても土産物屋があるし、どこをとっても観光客がいる。
帰り際、インターネットポイントに寄ったところ、チュニジア人にイタリア製の小銭入れを褒められ、
そんなことから色々しゃべって展覧会の話にまでなり、案内状を見せたら喜んでくれた。
今度はオ・ト・ナ!だったけれど!オ・ト・コだった・・・(笑)。
午後から夜まで制作、緑の絵を一気に80%まで仕上げる。
毎日晴れでフランスでも何十年振りらしい空気の乾燥っぷりに
洗濯物もパリパリ・・・。
5月20日 晴れ
いよいよ光の部分の描写に入り、今回パリで描く絵は光を2段階に分けて描くことにする。
より輝いて見えたり、ゆらゆらと動いて見えたりする為に。
うまくいきますように。
夕方画廊へ用事があっていこうとしたら、メトロに乗る直前に改札封鎖、警察官ぞろぞろ。
いったいなにがあったんでしょう?聞いても解らないし読んでも解らないし・・・
明日出直すことにして帰り、ちょっと身体を動かしたくて近所を30分程ロードワーク、1度通った路は通らないことにしながら走って危うく迷子になりそうになり汗の量が増したかな。
そして本日、月刊美術という雑誌にチャリティ展の記事がでた模様、どうやら写真がイケてないらしい(笑)。
このスケッチはパリっぽい(笑)
セーヌ川越しに臨むノートルダム寺院
シュミンケの水彩絵の具 筆はTSUBOKAWA8号とサインペン 紙はファブリアーノ
5月19日 晴れ
朝食の後、近所のスーパーへ買い物に行く。
諸々用事を済ませ午後から制作。
4枚目の青い下地の絵にとりかかる。
今のところパリは人も優しいし気候もいいし良い思い出ばかり・・・簡単な会話は大体勘で解るんだけれど、
それでも時々買った物の金額の端数の発音が聞き取れなくて店のオヤジに怒られたりする。
発音だけ覚えておいて帰ってから調べたりすると納得するけれど、
そんなに大声で何度も言われたってワカラナイもんはワカラナイ!(笑)
5歳児レヴェルなんだから優しくしろよな。
なにはともあれ、ある意味特別な環境にいて考えることも多く、盛り上がったり盛り下がったりするけれど、
気がつけば10年前に漠然と目指していた延長線上になんとか立っているんだな・・・。
そんな調子で 願い事 は叶うこともあるけれど、夢 はいつまでも叶わないものなのかもしれない。
5年後はどこにいるんだろう、とか考えながら充実した日々を全開で過ごしている。
夕方、最後の下絵となった絵はちょっと珍しい感じになりそうで、(ということはハズレるとやばい)
よく制作途中の絵にはニックネームをつけるんだけれど、こいつは「お子様ランチ」と呼ぶことにした。
理由はいづれ。
明日からは光の描写に入る!
5月18日 晴れ
朝から制作。
いい予感の大作の続きに着手したいのを抑え、新たに赤紫の下地の絵に取り掛かり、
パースの利いた構図で木漏れ日の路を描き出す。
夜、画廊の方達と食事を共にし、出来上がった案内状を受け取る。
色校正など、あの絵の色でこの絵の雰囲気で・・・と電話やメールでやり取りをして作ってもらったお陰で
良い出来になったと思う。
段々展覧会も現実味が帯びてきて更に制作に力が入る。
夕方の景色もまた美しいな。
5月17日 晴れ
テンションをあげるべく朝から取材へ出かける。
モンルージュのアトリエを出て、駅とは反対方向へ向かう。
遠く向こうに見える森らしき樹々を目指して歩くこと20分程。
意外な場所に着き、朝日が差し込む中数時間の取材をする。
途中、コゲラを目撃したり、鳩くらいの大きさの猛禽が樹の上で食事中・・・なんとその足には小鳥が(涙)
自然界の掟を垣間見ながら、ある意味特別な場所で過ごす内にイメージが鮮明に浮かび、静かに高揚しながらアトリエへ戻る。
午後、早速1番大きい絵に取り掛かり、夕方まで一気に描き、金の下絵完成。
普段からモチーフの持つバックストーリーには頼らないようにしようと思っているけれど、一歩を踏み出すには重要な意味がある。
ヤバイ・・・これは相当いい予感がするゼ。
5月16日
今朝は曇り空で肌寒い。
昨日から下がったテンションが復活せず、朝食も抜きで外へ出る。
ネットポイントへいくが休みで更にトーンダウン。
歩いていたらお腹が空いてきたので先日行ったバーガー屋へ行く。
「お前日本から来たのか、おれ コンニチハ と オヤスミナサイ と アイシテル は知ってるぜ」
という若者が焼いてくれるバーガーとカフェでブランチ。
おれだってそのくらいのフランス語は知ってるぜ。
普段からお喋りなネクラだっつってはばからねーのに喋らねーモンだからただのネクラになっちまって、
これじゃぁいけねぇってんでロックをかけてキャンバスに向かう。
向かうだけで1時間くらいが過ぎ、ようやく金の絵の具を溶いて筆を持つこと数時間・・・90cm四方の1枚の下絵が完成。
明日はテンション上げて描くぜ。
5月14日
下塗りの調整をした後、最寄のメトロの駅まで出かけ、窓口で回数券を2セット買う。
パリ市内ならばバスもメトロも1枚で乗れるから、20枚もあればしばらくは大丈夫だろう。
朝は曇っていたけれど、日差しもでてきたので写真を撮りながら外でランチにする。
スケッチをした後、アトリエで水彩画を描いたけれど上手くいかず・・・。
飲んでふて寝。
5月15日
今日は午前中からシテ駅までメトロで行き、小鳥市を見に行く。
普段は花市がある場所に日曜日だけ小鳥や小動物の市が出ていて、みんな文鳥みたいにくちばしが太いのばかりだったけれど見たこともない色の小鳥たちは見ていて飽きないな~。
景色をスケッチをしようとしたら雨が降り始めてきたので仕方なく散歩、サン・ミッシェルまで歩きサン・ジェルマン通りと交差する辺りのカフェで軽くランチ。
通り雨と共に、ここ数日の無意味に上がったテンションも過ぎ、ちょっと落ちついてきた。
絵は・・・日本では構成を考えて準備してきたんだけれど、なかなか踏み切れず・・・
下地はいい感じで仕上がったのでもう少し様子をみながら取り掛かろう。
大体のイメージはある、でもここから進むには何かが足りない気がする。決定的な何かが。
描き出せないとへこむけれど、こういうのを大切にして向き合わないと 単に行儀のイイ絵 で終わっちゃう気がして怖いからね。
夕方、昨日断念した水彩画に新たに取り組み、
さらに深くへこみそうになりつつ、ここは気合で乗り越え!
なんとか酒に溺れずに済むくらいには持ち直し(笑)夕食にする。
近所のマーケットで買ってきた安い牛肉、歯ごたえと言ったら半端じゃないので両面に切り込みを入れさらにフォークで滅多刺し、塩コショウ、バターと赤ワインでソテー、ボイルした野菜添え。
余計なことしていないんだから美味くて当たり前、これで肉が上等ならね。
絵も、きっと余計なこと考えなきゃいいんだよナ。これで頭が上等ならね。
先日モンルージュのアトリエの前にある建物をスケッチ。
シュミンケの透明水彩、筆はTSUBOKAWA8号、紙はラングトン サムホール 2011
さぞかしイイ絵が出来るんでしょうねぇ
という期待を背負って下色を塗り重ねること6時間程、大体の色合いが出来上がり
いよいよ描く景色を決め始める。
パリの気候はどうかというと、ここ数日は朝は涼しいものの(と言ってもジャケットはいらないくらい)昼間の日差しは汗ばむほどで、空気は乾いているので制作&生活のコンディションは良く、
季節柄夜の8時を過ぎてもまだ明るい。
外にスケッチにでたり、散策がてら散歩したりするけれど、テレビはなく(あるけれど5月8日から日本でいうところの地デジ仕様になったとかでまだ映らない)
日々細かいトラブルやハプニングはあるけれど、ロックをかけながら絵を描く1日はいつもと何も変わらない。
夜、画廊の方と食事をしながら大体のレイアウトのイメージをつかみ、それに向けていよいよ本格的に制作に突入!
昨日張ったキャンバスに和紙を貼り込み終える。
今回持ってきた和紙はこれまで使っていたものとは桁違いの高級品!
広げると100号はあるんじゃないかってくらいの大きさで、持った手が透けるくらいの薄さの何とかいう紙。
昨年の冬、ある画廊の方がプレゼントしてくれた 某有名大物日本画家の先生が
どうしても! と職人さんに頼み込んだけれど、もうお年で漉いて(すいて)くれないという代物。
どの位凄いかというと・・・毎回こんな紙使ってるなんてずるいじゃん(笑) と言うくらいね。
おれなんかはたぶんもう2度とは手に入らない。
膠水(にかわすい)でヒタヒタにしているのに刷毛で擦ってもまったく毛羽立たない!
素晴らしい!
今までの工夫や苦労は何だったんでしょう・・・。
画像は和紙を膠で貼り込んでいるところ。
ボタンを押すときっかり10秒後にシャッターを切ってくれる名カメラマン撮影。