PARIS

 

5月24日 晴れ

ふと通り過ぎてしまうような何気ない景色の中に、特別なものが見えるといいと思う。
逆光のこの絵を見ている人は、必然的に光のある方を向いていることになる。
実在するもののシルエットは、光を捉えるきっかけになり、そうして影が浮かび上がる。
影の部分に施した色彩やマティエールによって風の温度や匂い、時の流れを見せ、それが人の生きる過程と重なって見えた時に、
その絵から受ける印象が深く心の中に入り込むことを願っている。
大切にしていること、美しいと思うもの、つかみどころのないそれらを手探りで確かめながら、
現実的な空間と重ね合わせていくことで普遍的な心の居場所を作りたい。
例えば植物が光を、動物が水を求めるように。

郷里を後にして、本格的に絵の勉強を始めたのが今から20年ちょっと前。
人生のちょうど半分を絵の世界で生きてきた。
おれにとって絵を描くことは居場所を作ること。
美しくないものの中にも美しさを、灰色の世界でも心豊かに、信念を持って我が道を行き、人の幸せを願う。

絵描きとしてこれからずっと、こういう綺麗事を作って行くんだと思う。
世の中綺麗事に溢れているゼ・・・ってヤツがいたらおれの絵を見に来てくれよ。
本当の綺麗事を魅せてやろう。



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