見えること、見えたこと

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2ヶ月半のパリでの生活から日本に戻って2週間、

もうパリに居たのと同じくらいの時間が経った様な気がする。

 

暮らしの中心だったパリの少し外れのモンルージュという街、

近くにいくつもあるパン屋、週末に出るマルシェ、いい取材をさせようと

あちこち連れ出してくれる先輩、友人、良い制作ができるようにと

気を配ってくれるギャラリーのスタッフ、アーティスト仲間。

アパート近くにあるケバブ屋のシェフやスタッフのトルコ人は

店の前を通りかかる度に「元気か?お茶飲んでいけよ!」なんて声をかけてくれ、

肉屋は順番待ちの間愛想を振りまいてくれたり、魚屋は今日も買いに来たのか!

というように気さくな態度で接してくれた。

 

街を歩けば「良い帽子だね」とか「バカンスできているの?」とか「このワインはこの前買って美味かったよ」

とか、その他やたらと話しかけられる日々を送り、

フランス人の家族に招かれて食事をしたり、街で出会ったアーティストと仲良くなったり、

受け入れられている感を与えてくれた街は文句なく居心地が良かった。

 

そんな中で制作した作品の評判は上々で、何か言葉以外に通じる心を見た様な気がしている。

時々、「画家って死んでからしか売れないんでしょ?」なんて事を言われたりして、

若い頃はクソ真面目に答えていたけれど、今はそう思われていても良いかな と思って聞いている。

目先のことはもちろん大事だけれど、信念の結晶みたいな作品が、本人が死んだ後まで

受け入れられるなんて最高に嬉しいじゃないか。

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これまでの人生の中で恨みつらみを一切持っていないと言う訳ではないけれど、

世界中で起こっている摩擦のとなりで、

人として居心地よくできる一言を交わせることが世界にとってどれほど大切なことか。

周りを押しのけて自分の主張を押し出すだけじゃなく、互いの存在意義を一旦受け入れたのち

品格を持って信念をぶつけ合う、それを作品として世に出すのが

おれにとってのアーティストの在り方だと、改めて感じたのだ。

 

 

 

 

 

 

Paris→Kawasaki

2ヶ月半振りに帰国。

パリへ行く前に描き始めていた大作を前に、このまま進めようとは思えなかった。

パリでは下地からフィニッシュまで色々な試みをし、賛否両論はあっても

自分にとってはとても手応えのある時間を過ごした故、

これまでを否定はしないけれど、全てがそのままという訳にはいかないのは自然なことなのかな。

早速大改造を施し、新たなテンションで描き始めた。

7月に東京でグループ展、9月には同じく東京で個展があり、ハードさを増す予定なのです。

 

パリでの新たな展開を含む制作の結果を少しアップします。

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Historical Tradition    113,8×145,8cm mixedmedia on canvas 2015

元々はワインの貯蔵倉庫であった場所に所蔵されている

個人のコレクションによる100年前の馬の彫刻。

遥か昔から子供たちの無数の夢を乗せて光の中を走ったか。

単にアトラクション的な遊具に留まらず、造形的にも職人の手を感じる。

残したいという思いを、超えてきた時と共に描きたい。

 

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Carved in Time  92×72,8 mixedmedia on canvas 2015

木馬にまたがって光の中を進む途中で見た景色は

その後どれくらい記憶の中に残り続けるだろう。

オルゴールみたいな音楽を聴きながら、

どこまでも行けると思う瞬間を味わった記憶が

時を刻む、というタイトルに込められている。

 

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Still Ending   113,8×145,8cm mixedmedia on canvas 2015

この場面を初めて見た時、とても静かな空気を感じたが、

次第に何か不思議な雰囲気を持っていることに気づいた。

船の周りに人の気配はなく、最近船が使われた形跡もない。

それは長い間の役目を終えた後の様でもあり、

時の刻む緩やかな風化が積み重なって深い呼吸と共に光の中に浮いている。

果てしなく続く時間と人の手の跡を描こうと思った。

空気が失われていなければいい。

 

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Sound of Town   81×81cm mixedmedia on canvas 2015

人は皆互いに異なる背景を持っている。

生まれた場所、性別、目の色、心惹かれることから向かう先まで。

瞬時にすれ違う間にHAPPYな光と音が作られていればいい。

 

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Flow Gently   60×73cm mixedmedia on canvas 2015

風も水も光も音も緩やかに流れる。

この景色の絵を前に深呼吸をする。

少なくともその間だけは平和な心でいられる

 

 

6月3日

パリ滞在2ヶ月の間に大小20点の制作を無事に期日までに終え、

展覧会が始まりました。

この日は界隈のギャラリーが夜10時過ぎ(日の入りが夜9時半くらいで、9時過ぎまで夕方くらいの明るさ)

まで開けていて、アートファン達がはしごしながらギャラリー巡りをするノクチューンという日なのです。

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参加するギャラリーの前には前日からブルーカーペットが敷かれ

当日は夕方から沢山の人たちが集まってはまた別のところへ行くというのを繰り返し、

その間に大勢の人達と話、フランス語は通訳してもらい、日本語と英語とイタリア語はなんとかかんとか。

今回は新しいモチーフや手法も取り入れたりしたので、絵にだいぶヴァリエーションが出て、

そこら辺も含めて好評で、ホッと一安心。

日本からのツアーの皆さんも無事到着、パーティのあとは近くのビストロで食事をし、

楽しい一夜でした。

詳しくはまた書く事にして、一先ず展示の模様を。

 

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