不安というのは
人を狼狽させるものなのだと常々感じている。
子供の頃からそういう場面はいくつもあった。
運動会や発表会、試合、テスト、受験、事件、事故・・・
思い当たる節はこの他にもたくさんある。
その時々でどう対処してきたか、
都度判断を下しどう振る舞ってきたか。
その結果を経て今に至る。
2002年、ニューヨーク同時多発テロが起きた翌年の冬、
おれは独りニューヨークの街中を彷徨っていた。
ニッポンジンのただの田舎の兄ちゃんの一人旅ではあったけれど、
そこには一生ものの出会いと経験があった様に思う。
手当たり次第画廊や美術館を見て回った1週間ほどの間に
この街で暮らす人たちのリアリティを感じた。
ユーモアに出会ったり、危うい一面を垣間見たり、優しさに触れたり。
そんな折、主に伝統的な絵画を収蔵している美術館を訪れたときのこと、
そこにいたご婦人が声をかけてくれ、
「立ち直れないほどのダメージを受けている中でこれらの美術に救われた」
という様なことを言ってくれた。
当時はアルバイトで貯めたお金を握り締め・・・的な感じだったのだけれど
おれもいつかはそんな力を持つ絵を描いて世に出したい と思った瞬間だった。
現地で世話をしてくれたアーティストは生計をたてるためにレストランで働き、
毎日皿洗いやエビの皮剥きをひたすらやって迎えた給料日に強盗に遭い全額盗られた
事が3回ある、あの時に戻ることを思えば何でも辛くはない、と。
人にはそれぞれの構えと覚悟があると思うが、
試されていると感じる。
おれが絵を描くことで誰かの心に一筋でも光が射すことを願っている。