Boots&Knif /Rock&Painting



今から約10年前、新潟県にある雪梁舎という美術館の支援を受け、イタリアに1ヶ月滞在することになった時、
その経験を踏みしめようと、確か3万円弱で買ったブーツ。
当時は30歳を過ぎていたのだけれど、絵の具を買ってアパートの家賃を払うのがやっとなくらいで、
幾つものアルバイトをかけ持ちながら絵を描いていたから、
大した買い物だった。

1ヶ月のフィレンツェ滞在の翌年、1年間のイタリア生活をすることになるけれど、
そこでも靴底を交換しながらいろんな国を歩き倒した。
その後もずっと履き続け、今回も当然の様に履いてきたんだけれど、なんだか雨が染みるな・・・と思っていたら
左脚側面のソウルとのつなぎ目の革が5cmくらい裂けており、
しかも、ブーツクリームを塗って手入れをしようと手にとって気がついた・・・。
ボンドで修復を試みたが、いつまで保つか・・・。

そして、制作中にペインティングナイフが折れた(笑)
あー思い出した、去年のパリ滞在中にも折れたんだった。
絵の具を塗っている時じゃなく、ナイフについた絵の具を拭いている時に折っちゃうんだ。

この1年くらい(?)、描いた絵の雰囲気が、数年前に比べて 楽しげ になってきていることには気づいている。
それまでは、 淋しげ な空気を含んでいることを自然に受けとめていた。
思い当たることは心境の変化というよりは環境の方に影響力があると感じているんだけれど、
まぁ環境によって心境は変化するようだからどっちだろうか。

相変わらずHard Rockをかけながら制作しているわけで、それについてちょっと考えてみた。

なぜMetalやPunkを含む激しい音楽をかけて描くのか。
そして絵からはそれらの衝動はあまり伝わらないらしい。

子供の頃からやんちゃではあったけれど、日が暮れるまで釣りをしたり、
暇さえあればクレヨンを持ってスケッチブックやチラシの裏紙に絵を描いていたり、
静かで平坦な心は元々持っている(マジだぜ)
対人や内発的はアイディアを 外に出す というところに起爆剤が要るわけで、
それがおれにとってのRockなんだ。

だからおれの描く絵にも、何かを超えるために必要な力があって欲しい。
間違えたり、人を傷つけたり、目の前の世界に全てを見いだせなくなった時でも、
その先へ行けばきっと悪くない世界があるという希望が含まれていればいいと思う。
おれの生き方そのものだ。

これまで、最高な時も最低な時も、そうやって何百枚も描いてきた。
きっと間違いじゃない。


    


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