今から十数年前、正確には12年前、
日動画廊主催の新人作家登竜門の一つとして開催された昭和会展に
出品する選考に勝ち残り、そこで優秀賞をもらった。
1等は昭和会賞 当時の賞金は100万円。
次いで日動火災賞とか日動美術財団賞とかって賞があって、
優秀賞はその次にある賞だった。賞金は30万円。
その時の絵がこれ。S50号 WINTER SHADOW- NY 5TH AVE-
この数年前に行った初めての海外一人旅、
冬のニューヨークを歩き回った時の、刺激と焦りと怯えと野望を
朝の光に見透かされたと感じた瞬間に見た景色。
これを描いた当時は6畳と4畳半にキッチンと風呂がついた
木造のアパートに住んでいて、
そういえば後に「なんか汚らしー感じでしたねぇ」とか
「洗濯機が外にあるの初めてみた」とか色々な人に色々言われたけれど、
常にギリギリな生活なもんで、おれにとっては頑張って手に入れた城だった。
銀座の画廊までの搬入や額装は、アーティストの友人に手伝ってもらい、
満身創痍で臨んだ戦いだったわけで、まぁこれが駄目だったら死んでたかもな、
と思わなくもない前置きがあり、学生を終えて以降初の転換期だった。
この年に別の試験をパスした末、イタリアへ留学する事になるわけだけれど
それはここでは割愛。
兎にも角にもこの1枚でその後の身の振りを決めたり
自分の進むべき絵描きとしての路を見いだし、覚悟をした絵なんだ。
この時の気持ちは一生忘れない。